August 02, 2007

ゴスペル&クラッシック

Gospel Soup(52) ゴスペル&クラッシック

 いや、ものすご〜く見ていて落ち着かないDVDだった。『Gospel Goes Classical』。〜Featuring Juanita Bynum & Jonathan Butler
 
 ゴスペル女性歌手というより、「歌う説教師」ジャニタ・バイナム(Juanita Bynum)と、南アフリカ出身の有名ギタリスト・シンガーであるジョナサン・バトラー(Jonathan Butler)が、クラッシックのオーケストラ(メンバーはほとんど白人)と、黒人クワイヤと一緒に、クラシカルなコンサートホールで歌うコンサートライブのDVDである。指揮者は、Dr. Henry Panion(黒人男性)
Juanita bynum
 
 普通なら、オーケストラをバックにゴスペルって、あらなんて素敵な企画♪と思うし、CDを聴いていたら、ジャニタ・バイナムの歌唱力に聴き入ったかもしれない。ところが、DVDで映像を見ると、ヘンすぎるのである。何がって黒人と白人の温度差がありすぎ。

 まず客席はほとんどが黒人。ゴスペル界のスターであるジャニタ・バイナムが、舞台に出てきたとたんに客席は拍手喝采。歌を歌えば客席は感きわまり、黒人クワイヤもそれに同調して、また機関銃みたいな扇動的な彼女のMCにも、客はいちいち相づちをうち、うなづき手をかかげる。つまりは黒人教会のコンサート形式の熱狂的な礼拝みたいな感じなのだが、その中ですっぽり・・・・中央の白人たちのオーケストラのメンバーが、何の同調もしないのだ。
 
 いやはやこれはもう、温度差があるなんてものではない。そこだけブラックホールみたいに(いや、白人がほとんどだからホワイトホールか)、存在を知られてはいけない黒子のように(いや、白人だから、黒子はヘンだな。ああ、ややこしい)、ドーナツの真ん中の穴にみたいに、存在が抜け落ちているのである。もちろん白人オーケストラは演奏しているのだが、そのスピリットは、全く音楽ともシンガー達ともシンクロしていないのだ。

 ジャニタ・バイナムが、客席に熱くまくしたて、語るように歌い始めても、オーケストラのメンバーは、「このヒトの話、はやく終わらないかしら。」といわんばかりに、首をかしげたり、あるいは、全く何も聞こえないかのように無表情であったり、空の一点を見つめたり、まったく心ここにあらず。演奏中も指揮者は煽れども煽れども、盛り上がっていくのは、バックのクワイヤだけ。真ん中のオーケストラからは、「私、演奏終わったら、すぐに帰るわ」というオーラが満ち満ちている。指揮者が曲の合間に話をして、ジョークを言っても、オーケストラのメンバーだけ笑わない。うわ〜こわいよ〜。針のむしろのようだ。
 
 このオーケストラとクワイヤは、Gospel Goes Classical Symphony Orchestra and Choir。このアラバマにおけるクラッシックとゴスペルの融合企画は、2003年にスタートして、これで3回目。かつてはドリンダ・クラーク・コールや、バイロン・ケイジも出演。う〜ん。でもこの企画、次回はあるのか?指揮者はイヤじゃないのか。こんな一体感のないコンサート。
 
 音楽の好みはひとそれぞれだが、それにしても同じ舞台で同じ曲を伴奏しながら、この映像を見ると、黒人と白人のテイストがいかに違うかとつくづく思う。多くのアメリカの街では、黒人と白人の居住区域が、暗黙の了解みたいに分れていたりするし、黒人教会と白人教会があったりするが、この舞台の上の人たち、同じジーザスを信じてるんですかいな?ほんまに?と、言いたくなるような映像だ。
 
 ・・・とは言うものの、私もこのジャニタ・バイナム、歌は巧くて、すごいなあと思いつつ、実はこういう熱狂的で、たたみかけて追いつめるような恍惚とした黒人パスター的しゃべり方は、個人的には、ちょっと苦手。現地では、黒人の女性の生き方のオピニオンリーダー的なところもあるかもしれないのだが。彼女がしゃべればしゃべるほど、私は、すーっと引いていく。なんでかなあ。あれ?な〜んだ、私と彼女の間?にも、めいっぱい温度差があるじゃないか。う〜む。う〜む。いや、人種がどうというより非常に感覚的な「好み」の問題なのだが・・・。

Gospel Goes Classical 1


<参考> 
Gospel Goes Classical企画
 http://www.gospelgoesclassical.com/

Juanita Bynumジャニタ・バイナム・オフィシャル
 http://www.juanitabynum.com/

Juanita Bynum - ♪Lord, I'm Available to You
 http://www.youtube.com/watch?v=54vnFap0Gmk

ジョナサン・バトラー(日本語ウィキペディア)
     http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%8A%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%90%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%BC


graceshinkai at 00:02│Comments(13)TrackBack(0)ゴスペルCD/DVD | ゴスペル雑記帳

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この記事へのコメント

1. Posted by たま   August 02, 2007 10:13
はじめまして。興味深く読ませていただいてます!

 日本の古いタイプのクリスチャンもみんなあのオーケストラみたいな感じですよ。
 ゴスペルクワイヤーがどんなに聖霊に満たされて賛美していても、無表情ってことはよ〜くあります。が… 彼らは白けているのではなく、感じ方や、表現の仕方が違う、または感情は表現しないもの、と自然に刷り込まれてるんですね。実は心の内には熱い信仰が燃えてたりするんですよ。
 私も「白けた」感じに最初は違和感を感じてましたが、ゴスペルを何年もやっているうちに、「違ってていいんだ」と理解できるようになりました。
2. Posted by hana   August 02, 2007 23:14
お久しぶりです!!
トロントも暑くなってきました。

今回も、面白いトピックですね〜。

やっぱり、お互いに違和感があるんでしょうね。
そういうのは雰囲気ででてきちゃうものですものね。

もちろん白人と黒人が分け隔てなく付き合うこともできると思いますが、未だにお互いバリアを張ってしまっている所はあるんじゃないですかね。

私の周りの狭い人間関係を見ても、例えば音楽ですが、いわゆる白人の人たちはあんまり黒人の音楽って聞いていないですもの。

私達日本人は周りに白人も黒人も身近にいないから、ある意味どっちも同じように違うわけで、そういうところではどっちの音楽に入っていくのもそう抵抗ってないのかもしれないけれど、でもやっぱり実際北米ではまだまだ音楽でもこの二つの肌の色の中で線が引かれてしまっているような気がしますよね。
3. Posted by ロン@ゴスペル   August 02, 2007 23:16
ご無沙汰しております。

分かるような気がいたします、ハイ(^^;
私も自分の中に「白人系の音楽を好む時期」と「アフリカ系の音楽を好む時期」が周期的にやってきます。
いずれも都会派(アーバン)の時期と泥臭い時期(アーシー)の波も来ますので、あたかも多重人格的です(^^;
なかなか一致しないんですよね。
今ではたまさんの仰るとおり違っていてもよいと思ってます。(たまさんこんにちわ!)

サンプルですが、「simunye」というアルバムを聴いた時にも
些かの違和感を感じましたよ。
(http://www.amazon.com/Simunye-I-Fagiolini-Sdasa-Chorale/dp/B000005E5K/ref=pd_bbs_1/103-0023681-6116669?ie=UTF8&s=music&qid=1186063719&sr=1-1)
このアルバムは南アフリカ・ソウェトのゴスペルクワイアと英国オックッスフォードのコラボレーションです。

長々と失礼しました。
4. Posted by しんかい   August 03, 2007 00:35
☆たま様

初めまして!書き込みありがとうございます。たま様のブログは、ゴスペルマガジンで、よく拝読させていただいております。

>彼らは白けているのではなく、感じ方や、表現の仕方が違う、または感情は表現しないもの、と自然に刷り込まれてるんですね。実は心の内には熱い信仰が燃えてたりするんですよ。

日本人のそういう感じ、わかります。特に私たちの両親の世代なら、そういう方々のほうがずっと多いんでしょうね。

>私も「白けた」感じに最初は違和感を感じてましたが、ゴスペルを何年もやっているうちに、「違ってていいんだ」と理解できるようになりました。

たまさんのように、長年ゴスペルをやっておられる方の、ご意見は重みがあります。今後とも、ご教示のほど、よろしくお願いいたします。
5. Posted by しんかい   August 03, 2007 00:44
☆hana様

こんにちは。トロントでも暑いですか。関西は台風前のじっとりした暑さです。こんなに汗をかいても痩せません。いや、それはともかく。。。

>周りの狭い人間関係を見ても、例えば音楽ですが、いわゆる白人の人たちはあんまり黒人の音楽って聞いていないですもの。

いかにもいかにもです〜。黒人はまた「どカントリー」は聴かないでしょうしねえ。そうそう、山田詠美の小説「ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー」を思いだしました。逆に肌の色は違っても、音楽の好みが似てると、お互いに似た空気を感じて惹かれあい、わかりあえたりするっつーこともあるんでしょうね。
6. Posted by しんかい   August 03, 2007 01:02
☆ロン@ゴスぺル様

お元気そうでいらして、またマニアの王道を今日も極めておいでで、ほんまに何よりです。

>私も自分の中に「白人系の音楽を好む時期」と「アフリカ系の音楽を好む時期」が周期的にやってきます。

これは、私も来ますね〜。たまにブラックゴスペルが暑苦しすぎて、聴きたくない時すらあります(笑)。

>このアルバムは南アフリカ・ソウェトのゴスペルクワイアと英国オックッスフォードのコラボレーションです。

わあ〜。また貴重な情報ありがとうございます。これって、「あのソウェト」とは別グループのソウェト出身のグループなんですね。初めて知りました。だけど、これはどっちのグループも、ハーモニーがきれいで違和感より何より「大好き」です。もともと私は、ブラック系が好きというよりも、合唱曲がとても好きなんでした。だからこういうコラボは歓迎です。
7. Posted by べちゃん   August 05, 2007 10:39
おもしろかったです。
私は音楽に関してはわからないのですが、
融合なんかしてないぜ、っていうのは実感あります。
それぞれの持ち場でけんかせずやってるな、ってのが。
それをわざわざ一緒にしちゃうってのに、アメリカの心意気を感じるけど、中庸にいる日本人としてどうも居心地悪いってわけですね。
しんかいさんの読むだけだと、私もこういうのはだめかもしんないや。

自発的、ってのが何にしろ好きだけどねぇ。

日本人は、この黒白の温度差に敏感なんでしょうか?それぞれの側は実際どう思ってるんでしょうね?
8. Posted by しんかい   August 05, 2007 22:31
☆べちゃん様

いつもコメントありがとうございます。

>自発的、ってのが何にしろ好きだけどねぇ。

ええ。この企画の大きなスポンサーになっているのが、黒人ゴスペルCDの有名レーベル会社。企画が先にありきで、クラッシックの楽団メンバーについては、「一応、企画に乗っかってみました。はい」という感じでしょうか。

>日本人は、この黒白の温度差に敏感なんでしょうか?それぞれの側は実際どう思ってるんでしょうね?

それぞれの方はお互い、「そーゆーもの」だと達観しているのでは?と思われます(笑)。社会の共同体としては一緒にやっていくべきだけど、髪形や音楽や文化については、どうしたってそれぞれの好みがありますもんね。
9. Posted by Shogo   August 16, 2007 17:40
ジャズの世界に関して言えば、昔の黒人ミュージシャンにとっては、白人のオーケストラとの共演は、ほんの一握りのトップミュージシャンだけに許された憧れの舞台でした。

アルトサックスのチャーリー・パーカーは、1950年代にストリングスをバックに珠玉のスタンダードナンバーを録音しています。逆に白人のなかにも、まだまだ差別がひどかった1940年代から、黒人ミュージシャンの感性や技術や精神を敬愛してやまなかったミュージシャンも沢山いました。ジャズというアートにかける思いが、肌の色や人種を超越して、音楽という世界なかで彼らはひとつになりました。

10. Posted by Shogo   August 16, 2007 17:42
自分のスタイルでしか歌ったり演奏できない不器用な黒人ゴスペルミュージシャン当人たちにとっては、白人のオーケストラの伴奏なんて自分の音楽家としてのキャリアに箔が付くくらいで、ジャズメンと違ってそもそも白人の奏でるクラシックになんて興味も敬意も持っていないでしょうから、特別な思いなんてなかったのではないでしょうか? 本来なら人種を超えて神様を賛美できる素晴らしい機会なはずですが、なんだか純粋な賛美よりも、ショービジネスが優先した浅はかな企画という感じがします。
11. Posted by しんかい   August 17, 2007 06:02
☆Shogo様

ジャズの世界からの切り口でのコメント、ありがとうございます。長いコメント読ませていただいて、楽しかったです。うまい具合に融合できる時もあれば、どうにもこうにも融合できない場合もあるというのが、よくわかりました(ヘンなコメントですみません)。ソウェトのDVDでも、客席のオーストラリアの人たち、すごくお行儀がよくて、曲が終わっても、わりと表情も変えずに、演説を聞いたあとみたいな拍手をしてたでしょう。あれを見た時も、おんなじような気分になりました。
12. Posted by ちかちゃん   August 22, 2007 10:46
こないだのウチらのLIVE前に、You Tubeでいろいろ検索して、ウチらのやる「Shake The Foundation」を探して観てたんですが、UPされていた、とある映像にビックリ。
上白下黒スカートの、歌い方もクラシカルな合唱団と、やんちゃなバンド演奏の融合・・いや融合してなさ・・にビックリしたの。
「振り」もつけてあるんだけど、腰入ってねー的手振り、でもバンド演奏はガンガン・・・・
音楽は一緒に演る人同士が「相容れよう」「理解、敬愛しあってやろう」とする姿勢がなければね〜〜・・・心地よくないよね〜〜・・・人種を超える、ジャンルを超える・・って、口で言うほどたやすくないんだねえ・・・
13. Posted by しんかい   August 24, 2007 15:29
☆ちかちゃん様(ちかちゃん様って呼んでよろしいんでしょかね)

わ〜初コメントありがとうございます

>上白下黒スカートの、歌い方もクラシカルな合唱団と、やんちゃなバンド演奏の融合・・いや融合してなさ・・にビックリしたの。

ぐは〜!!そんなとこにもありましたか。融合していない集団!!やっぱりその、上白・下黒っていうのは、上が白ブラウス・下が黒のロングスカートでございましょか。英語で「♪夏が来れば思い出す〜」を歌ったら似合いそうな感じの方々。えっ?でもShake the foundation をクラシカルに・・・どやって歌うねん状態ですね。怖いものみたさで、はい。ちょっと見てみたいです。探してみます。

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