December 02, 2008

ゲイリー・ハインズ・ワークショップ2008を終えて

Gospel Soup (79) ゲイリー・ハインズ・ワークショップ2008を終えて

 〜Dignity(誇り)とUnity(連帯)と、
オバマというヒーローとUnsung Heroes(歌われなかったヒーローたち)〜

 
 何だかサブタイトルがやけに長いですが、今年のゲイリー・ハインズ・ワークショップ(Gary Hines Spiritual Workshop)に参加させていただいてから、もう一ヶ月以上も経ってしまいました。今年のワークショップ・コンサートも、市岡裕子さんやBee芦原さんや、スタッフのかたがたの多大なるご尽力のおかげで、なおさら素晴らしいものでした。ありがとうございました。
 
 あまりに密度の高い1日で、当日は明らかに頭が飽和状態を越えていた情けない私は、今回のワークショップの事を、自分の中で消化するのに、本当に時間が必要でした。
 


 今回のワークショップのテーマは、黒人霊歌(spiritual)。私たちが歌うゴスペルのルーツです。特に大阪では、午前と午後にワークショップがあって、さらにワークショップで習った曲を含めた数曲を、夜のコンサートで、舞台の上でみんなで歌う!!というすごい企画。
 
 とても長い長い1日。ゲイリーさんは何を教えてくれようとしたのでしょうか?
 
 キング牧師没後40年。1ヶ月前のワークショップの折は、まだ大統領選の前で、ゲイリーさんのTシャツにはオバマを応援するバッジ。そういう状況の中で彼は、アメリカの黒人達によって、奴隷時代から歌いつがれてきた黒人霊歌(スピリチュアル)の、まさにそのスピリットの部分と、音楽的な部分の双方を、全身で教えようとしていました。
 
 音楽的な面では、黒人霊歌を現代風のアレンジだけでなく、古い時代のメロディーやハーモニーでも教え、現代のゴスペルとの比較ができるように組み立ててくれた曲もありました。例えば黒人霊歌では、ペンタトニックのスケール(5音の音階、ピアノで言うと黒鍵だけを弾くとペンタトニックになる)がよく使われるらしいのですが、有名な♪Glory Glory Hallelujahや、♪Swing Low Sweet Chariotなども、現代の私たちにお馴染みの明るいメロディーではなく、当時のマイナーのペンタトニック(で、合ってるでしょか???)のアレンジで歌うと、一気にニュアンスが変わったのがびっくり。私たちが「これが黒人霊歌」と思っていた明るいこれらの歌も、もともとは黒人たちの涙とため息が、溶け込んでいる歌だったんだということを、改めて認識しました。
 
 そして歌のスピリット
 なぜこれらの歌は、歌われ始めたのか。
 なぜ歌いつがれてきたのか。
 なぜ歌い継ごうとしているのか。
 なぜあえて歴史の糸をたぐり、古いメロディーで今それを歌うのか。
 なぜ海を越えて日本にまでその歌を教えに来たのか。
 
 おそらくゲイリーさんの中にあるのは、強烈な誇り(dignity)です。
 
 歌うことが常に人生と共にある西アフリカの人々の血の誇り。奴隷時代においては、苦悩も救済も自由への渇望も、喜び高揚も、バイブルストーリーもすべてを歌にして、それを糧として生きながらえた黒人としての誇り。そしてその音楽が、時を経ても歌いつがれ、アメリカの様々な音楽ジャンルに影響を与えた誇り。今なおそれらが人々の背中を押し、魂をふるえさせることへの誇り。自分がまたその音楽の担い手であるという誇り。
 
 そしてゲイリーさんが自らのルーツを過去にたどり、黒人霊歌やゴスペルの歴史によって、自らの誇り(dignity)としているとしたならば、おそらく、ゲイリーさんが未来に向かって、たずさえているのは連帯(Unity)なんでしょう。
 
 今回のコンサートでもゲイリーさんが作った♪Unityという歌をみんなで歌いましたが、これは、人々が人種や国籍、宗教までも越えてつながることを願った歌です。今回のワークショップでは、まさに歌(黒人霊歌やゴスペル)が、国境や時代を越えて、人をつなげていくという場であったわけで、とても象徴的な歌でした。
 
 コンサートの最後に歌ったのは、サウンズ・オブ・ブラックネスの一番有名な歌、♪Hold On! Change Is Coming! その歌の通り、翌週にはChange!を合言葉にしたオバマ氏が、次期大統領に選ばれ、何かこう・・・・・一つの筋書きに沿ったドラマを見ているようでした。
 
 アメリカという国は、良くも悪くも、常に求心力のあるヒーローを望んで歴史を重ねて来ました。、キング牧師も黒人の偉大なヒーローで、また今回のオバマ氏は、キング牧師暗殺後40年目にして、ようやく出てきた新しい黒人ヒーローです。人種のるつぼのようなアメリカにおいては、確かにヒーローが不可欠ではあるのですが、黒人霊歌を歌ってみると、この国の歴史の石礎を担って来た大きな力は、実はunsung heroesアンサング・ヒーローズ)たちによるものであったことを気づかされます。
 
 unsung heroというのは、英語で「歌われなかった英雄」つまり、決して歌や文章によって賞讃されたり称えられることはなかったけれど、実際は大きな働きをした無名の人々(=縁の下の力持ち)を表現することばです。黒人達がこの国の労働力として、どれだけ多くの力となったか。
 
 作曲者不肖の黒人霊歌(スピリチュアル)は、unsung heroesたちの歌。unsung heroesたちは、歌われなかったけど、自分たちで歌ったん(sang)ですねえ。そして彼らの歌ったうたが、時を経て、今度私たちに歌われて(be sung)いることの不思議。
 
 1曲の黒人霊歌を私たちが歌う時、それを受け継いできた多くのunsung heroesたちがいるということの重みに、心を添わせたい気持ちになったワークショップでした。

キングス&クイーンズ
キングス&クイーンズ



graceshinkai at 03:17│Comments(8)TrackBack(0)ゴスペル雑記帳 

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この記事へのコメント

1. Posted by Rumiko   December 02, 2008 10:03
5 良い機会を持たれましたね。
たくさんの思いや知識がこもったワークショップ、私も参加してみたかったな〜

ゴスペルという言葉で多くの賛美歌が表現されますが、いつまでも歌い継がれるゴスペルはそんなにたくさんではありません。
そこには、神と祈る者の密接なつながりがあり、祈るものの魂がこもる賛美の声は永遠に歌い継がれると思います。
これこそが真の賛美で、薄っぺらなものではなくず〜っと奥深い心の叫びの中にあってなお神をたたえている声なのです。

しかし、神は偉大ですね!
長年にわたる彼らの悲痛な魂の叫びと賛美をしっかりと受け止めその声にこたえられている今日の現実を見る時、やはり全能の神です
ハレルヤ!
2. Posted by べちゃん   December 02, 2008 12:42
わかりやすくておもしろかったです。

アメリカを作ったのはあんさんぐひーろー。
ゴスペルは、アンサングヒーローが歌った歌。
歌わずにはいられなかった歌。なんですね。

最近脳の本を読んでね、
歌うっていうのは、
歌わずにいられないっていうのは、
歌うことで(しか)脳の秩序と調和が保てない、
っていうある種の<機能異常>みたいなもんらしいのです。それはまたの名を<才能>

音楽をすることとか、あるジャンルの音楽を特に好きであるということは、脳が欲しているということらしいです。

しんかいさんの共鳴は、ゴスペルにある、
んですね。
3. Posted by shinkai   December 02, 2008 17:07
☆Rumiko様

ごぶさたしております。こんにちは!
素晴らしく美しく力強いコメントをありがとうございました。

>神と祈る者の密接なつながりがあり、祈るものの魂がこもる賛美の声は永遠に歌い継がれると思います。

はい。歌謡曲もゴスペルも、「歌われる」というよりは、「消費されている」ようなご時世にあって、
歴史の篩を経た曲には、きちんとそういう理由があると、切に感じます。

今回のワークショップにあたって、みなさまに配布するspiritualの歴史のレジメみたいなのを、作らせていただく機会を得て、いろんな歌詞をみていたのですが、本当に彼らが素直に、ジーザス、神様に全幅の信頼(それしかすべがなかったという側面もあるのでしょうが)をおいて、自分のそばにいらっしゃるものとして、魂から語りかけ嘆きかける歌詞は、胸をうちました。

いつかRumiokoさんと、積もる話?をしてみたいものです。
4. Posted by shinkai   December 02, 2008 17:15
☆べちゃん様

う〜ん!いつもながら興味深いお話を教えてくださり、ありがとうございます。

>歌うっていうのは、
歌わずにいられないっていうのは、
歌うことで(しか)脳の秩序と調和が保てない、
っていうある種の<機能異常>みたいなもんらしいのです。それはまたの名を<才能>

あ〜!!この文章を読んで、おもわず頭にうかぶのはK原先生ですねえ(笑)。

歌わずにいられないように、脳がプログラムされちゃってる人が、(人類全部ではないけど)いるということなんですね。

>あるジャンルの音楽を特に好きであるということは、脳が欲しているということらしいです。

な・る・ほ・ど!!これで合点がいきました。
私がみょーにある種の音楽とか声を、偏愛していて、たまらーん!という感じになるのは、嗜好という面もあるけど、脳が欲しているからなんですね(笑)。

ただ、我が家においてちと問題なのは、夫と私の脳がどうやら同じ種類の音楽を欲してないということで、、、、。かなり好みが違います。

5. Posted by たかやんTack   December 04, 2008 22:06
shinkaiさん
ハレルヤ!

ゲイリーさんのワークショップ、自分も参加してました!
お会いしたかったです。

スピリチュアルの美しさてなんなんだろうとあれからずっと考えてます。

きっと苦しみと悲しみが深い分そこから生み落とされた涙は深く美しいのですね。

神様のみわざは素晴らしいです。



クリスマスに京都でコンサートしますのでご都合よろしければ来てくださいねー!

“CHRISTMAS GOSPEL LIVE 2008”

 「心から神への歌声を響かせる GOSPEL MAN が集結 ! ソウルフルな歌声が聖夜に響く!!」

日時:12月20日(土)

Open18:30 Start19:00

場所:醍醐交流会館 大ホール

京都市営地下鉄東西線「醍醐」駅下車すぐ上 パセオダイゴロー2F 

駐車場あり(有料)

出演:京都プレイズ・オブ・グレイス・ゴスペル・クワイアー

グレースマン他

*入場無料

お問い合わせ
主催:京都グレイス・バイブル・チャーチ     
京都市山科区勧修寺西金ヶ崎212-6
TEL 075(502)8126



6. Posted by MIMIZUGU   December 05, 2008 00:43
5 たのしいひとときをありがとう!! 同じものを愛しつながるたくさんの方々と ゲイリーさんの無尽蔵な愛に包まれて ほんとうに幸せな時間がすごせました 来年もあれば是非いきたいです***
7. Posted by shinkai   December 05, 2008 14:56
☆たかやんTack様

とてもご無沙汰しておりました!あの同じ会場にいらしたのですか!!?それはそれは、お会いできずに本当に残念でした。どちらのパートのいらしたのでしょう?

クリスマスコンサートのご案内もありがとうございました。12/20!まだ予定がたたず、申し訳ございませんが、素晴らしいコンサートになりますよう!また素晴らしいクリスマスになりますよう、お祈りしています♪♪♪
8. Posted by shikai   December 05, 2008 14:59
☆MIMIZUGU様

一緒に行けてよかったわ〜。たいへん心強かったです。来年もワークショップがあれば(と、また期待)、嬉しいですねえ。

>ゲイリーさんの無尽蔵な愛に包まれて ほんとうに幸せな時間がすごせました

本当に、なんかこうケタ違いな大きな愛情深さを感じましたね。それとあのゲイリーさんの体力もケタ違い!?感服することばかりでした。

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