January 11, 2010

ソウェト・ゴスペル・クワイア・コンサートが終わって

Gospel Soup (93)〜ソウェト・ゴスペル・クワイア・コンサートが終わって〜

 今さら言うのもなんではございますが、明けましておめでとうございます。今年も何卒、よろしくお願いいたします。
 
 早いですね。もう、1ヶ月も経ってしまいました。昨年12月の南アフリカのSoweto Gospel Choirのコンサートから。
 
 すぐにステージでの感動を、そのまま文章にしたい!と思ったのですが、いや、これがどうしても、できなかったんですね。あまりに素晴らしいコンサートだったので。耳に残った彼らの生の声が消えていくような気がして、文章どころか、コンサートのあと1ヶ月、なーんのCDも音楽も、なーんにも、まーるで聴きたくありませんでした。

 初来日のツアー。客席数1000人〜2000人の大規模の関東のホールで、9公演。3年ほど前には日本で無名に近かった南アフリカのゴスペルクワイアの公演を、今回のツアーでは、私も含めて1万人以上の人が生で聴くことができたというのは、何より大きな喜びでした。
 
 来日したメンバーは、男女合わせて18人。歌はすべてアカペラで、ジェンベ(アフリカン・ドラム)2つ、パーカッションのみ。リードシンガーは、マイクを使うけれど、コーラスの声を拾っているのは、コーラス両脇の広角の二つのマイクだけ。
 
 この実にシンプルなステージに、あざやかな衣裳に身を包んだ彼らが立ち、その放ち立つ歌声とリズムの、なんと高らかなこと。美しいこと!信じられないくらい、ぴたりと調和したハーモニー。

 歌も表情も、沸き上がる歓喜に満ち、その歌唱力と声量は、まさに圧倒的。ジェンベのリズムを、空気の振動で感じ、降り注ぐコーラスを生で客席で聴くというのは、もうまるで夢の中のようなひととき。彼らの全身全霊のパフォーマンス/讃美を、どのお客さんも、1曲1曲受け止めていたように感じました。

 それにしても濃密な2時間。1部・2部合わせて、アンコールの♪Oh Happy Dayも含めると、なんと29曲!彼らは歌いっぱなし。踊りながら歌う曲もたくさんあるというのに、いったいどれだけ体力があるんでしょう!?そして2部では、CDに所収されていないクリスマスの定番曲数曲を、アフリカンアレンジで歌うという、12月ならではのスペシャルコンサートでした。
 
 アカペラっていいなあ。昔のウイスキーのコマーシャルの「何も足さない、何も引かない」といういう、コピーを思い出したりしました。彼らにとっては、過剰な演出も長いMCも解説もまるで不要。
 
 アカペラであることが、彼らの「素」・・・みたいなもの、歌以外の内面やら人柄や、背負ってきた歴史や背景までを、かえって際立たせているかのようでした。
 
 しかし、最小限の舞台演出の中で、唯一時折歌にあわせて変わっていたのが照明。そして♪Asimbonaga(アシンボナガ)という曲と、♪Bikoという曲をメドレーで歌った時だけ、その照明が赤く変わったのでした。

 ・・・ああそうか。これは南アフリカという国が背負ってきた負の歴史、アパルトヘイトによって流された血の色を象徴したいのだなと、とその時ふと我にかえりました。
 
 ちなみに、この2曲はゴスペルソングではありません。
 
 ちょっと長くなりますが、この2曲について、以前日本版HPに書いた、彼らのアルバムBlessedのライナーノーツから、引用します。      
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December 09, 2009

初来日迫る!〜大地のゴスペル・南アフリカの風〜ソウェト・ゴスペル・クワイア

Gospel Soup (92)初来日迫る!〜大地のゴスペル・南アフリカの風〜
  ソウェト・ゴスペル・クワイア(Soweto Gospel Choir)


 アフリカン・ドラム(ジェンベ)に映える彼らの重層的なアカペラの歌声を初めて聴いてから、ほぼ、3年近く待ち続けていたと言ってもいいかもしれません!

soweto japan tour南アフリカのSoseto Gospel Choirが、いよいよ12月11日より日本ツアーを行います。
 
 
 

 先日の、FIFAサッカーワールドカップ2010(南アフリカ開催)の組み合わせ抽選会の後のショーでも、ソウェト・ゴスペル・クワイアのショーが、舞台上で華やかに繰り広げられ、NHKでも放映されました。
 
 そして、南アフリカで先行発売されていた通算5枚目のアルバム、その名も"GRACE"が、HMVでもネット販売され始めました!(Amazonでは、1月からUSA版が発売予定)

soweto Grace 


 このアルバムの中に、♪Umoya we Nkosiというズールー語の曲があります。旧約聖書のエゼキエル書のまあ♪Dry Bonesみたいな歌なんですが、訳すとThe Spirit(umoya)of the Lord(Nkosi)。
 
 

 去年からちょっとありがたくズールー語を教えていただいいて、勉強は遅々として進まないのですが、

 ズールー語では、umoya(ウモーヤ)とは、風のこと、スピリット/魂のこと。そしてキリスト教でいう「聖霊」もぜんぶ同じひとつの単語umoyaなんだそうです。

もともと新約聖書の原語ギリシャ語でも、聖霊は風や息とおなじπνευμα(プネウマ)という語らしいのですが、吹きそよぐ風も霊も聖霊も、み〜んな同じ単語(umoya)って、何か、う〜んいいなあ。ズールー語大好き。続きを読む

October 06, 2009

Listen To The Rain 〜黒人霊歌♪Dindn't It Rain ?より〜

Gospel Soup (91)Listen To The Rain  〜黒人霊歌♪Dindn't It Rain ?より〜

 今日は雨。

 山田詠美の処女小説の「ベッドタイムアイズ」で、黒人のボーイフレンドが、主人公の女性を落ち着かせようと「静かに、ベイビー。雨の音を聴きなよ(リスントゥザレイン)」とベッドで言って、彼女をなだめるシーンがある。

 若い頃にこの本を読んで、私は「う〜ん。何てかっこいいセリフだ」とうっとりし、来るべき将来、男性からこういうセリフを言われるシチュエーション、もしくは言うシチュエーションに備えて、"Listen to the rain"ということばを、胸に深〜く刻み込んだものである
 
 しかし、実際のところ、そのようなセリフを言う(言われる)シチュエーションなど、まるでないままに、人生が過ぎて20年。そんなセリフも忘れかけていた頃、昨年のゲイリー・ハインズ氏のワークショップでの黒人霊歌に、偶然同じ歌詞があった。(ちなみに、今年2009年のゲイリー氏のワークショップは、もうすぐ大阪10/10(土)・名古屋11(日)・東京(日)です。インフォメーションはこちら
 
 Listen to the rain.

 歌の題名は♪(Oh my Lord) Did n't It Rain?

 ノアの箱船を題材にした有名な黒人霊歌だ。黒人霊歌のご多分にもれず、歌詞には色々なバージョンがあるようだが、ゲイリー氏の用意してくださった歌詞の一部に、 Listen to the rainというフレーズがあった。

 いや、冒頭のベッドタイムアイズとは、そういえば何の関係もないのだけれど。

 タイトルのDid n't It Rain?は、直訳すると「雨は降らなかったのかい?」「降ったんじゃないのかい?」となるが、どちらかと言えば反語的に、「いやあ、実によく降ったもんさ。ひどい雨だったなあ」というニュアンス。大人や老人が、子どもたちに、ノアの方舟のストーリーを、歌語りしているような歌詞だ。
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October 02, 2009

The Blessing Of Abraham(アブラハムの祝福)とその背景

Gospel Soup (90) ♪The Blessing Of Abraham(アブラハムの祝福)とその背景


 とても楽しいゴスペル曲。ドナルド・ローレンス(Donald Lawrence)と The Tri-City Singers (トライシティーシンガーズ)の、♪Blessing Of Abraham(ブレッシング・オブ・エイブラハム)。
 
 リンカーン大統領のファーストネームは、アブラハムだった。
 ♪アブラハムに〜は、7人の子。ひとりはのっぽであとはチビ。っていう手遊び歌をキャンプで歌ったことのある人は、少なからずいるだろう。でも、うーん、私たちにとって、アブラハムはなかなか遠い。
 
 気分高揚には最適なゴスペル曲で、♪ザ・ブレッシング・オブ・エ〜イブラハムと鼻歌で歌っていると、掃除もはかどる。でもそのそばから、エルサレムで、パレスチナ人デモ隊とイスラエル警察が衝突とかいうニュースが流れてくると、気持ちは複雑だ。

 アブラハムは、ユダヤ人のいわば始祖のような存在であり、イスラム教・キリスト教にとっても聖人。この歌は、ユダヤ人だけでなく、すべての人がいわばアブラハムの子孫であり、彼のような強い信仰を持って受け継げば、神はあなたを祝福して繁栄させてくださるという内容・・・なのだが、まずは映像と歌詞/和訳を。
 



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July 28, 2009

見てきました!!「完璧な皆既日食」@小笠原〜北硫黄島近海「ふじ丸」船上にて

Gospel Soup (89) 「完璧な皆既日食」

 それはそれは、今までの人生で一番きれいで、一番不思議な光景でした。
 
 奄美方面のお天気がすぐれない中、本当に申し訳ない感じなのですが、幸運にも晴天だった小笠原の南、北硫黄島近海で、船上から完璧な皆既日食を見て、帰宅しました。
 
 小学校5年生の時、部分日食を見て感激して以来、「いつかは、皆既日食を見たい」と、ずーっと思っていたのですが、実際に洋上で見たホンモノの「皆既」日食は、今まで見た写真や映像や、想像とすら全く違う、言葉にならないくらい美しく崇高なものでした。

<NHKによる北硫黄島での皆既日食> (*私たちは硫黄島には上陸してません。)

 

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