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April 15, 2007

南アフリカ国歌  分裂から調和、そしてFeeling Goodへ

Gospel Soup(48) 南アフリカ国歌  分裂から調和。そしてFeeling Goodへ
 
 本題に入る前に、本日のタイトルとなった♪南アフリカ国歌♪の映像をご鑑賞ください。
 Nkosi Sikele'l Afrika (South African National Anthem)
  http://www.youtube.com/watch?v=ow40LQs0ue4
 (歌っているのはポール・サイモン、ママ・アフリカことミリアム・マケバと、グラミー賞受賞経験のある南アフリカのレディスミス・ブラック・マンバーゾなど。映像情報提供はShogoさん)←この映像については、あとで説明します。
 
 そろそろ呆れられているかもですが、南アフリカのゴスペルクワイヤ、ソウェト・ゴスペル・クワイヤ(Soweto Gospel Choir)を聴く日々は、今日も続いています。そこからまた南アフリカの他のゴスペルクワイヤや、シンガーの曲も聴いたり、アフリカ文化の本を読んだり、資料を集めたり、ま〜、私ったら勉強好きなこと好きなこと(笑)。

soweto bannerそして!!ソウェト・ゴスペル・クワイヤについては、公式日本語版ホームページを立ち上げるということで、な〜んとShogoさんが、ソウェトの副プロデューサーとコンタクトをとり、正式に認可がおりたので(祝!!)、ソウェトファン何人かの方々と協力して、そちらの原稿についても、徐々ですがに整えているところです。数ヶ月以内には日本語版HPがお披露目になることと思いますので、お楽しみにさてさて・・

 そのHP作成の関係で、2004年にイギリス版ヘラルド紙に掲載されたソウェトのコンサートの記事を、日本語に訳していたのですが、う〜ん、この記事には、ソウェトの魅力のキーワードが、全部入ってましたね。まずステージ上の彼らのことを「歌う万華鏡(singing kaleidoscope)」と表現。色とりどりの民族衣装に身を包んだ彼らが、ステップを踏みつつ動き、隊列を変えたりする様を見事に表しています。

歌う万華鏡そして、ソウェトを形容する表現としてfeeling good(聴いて、いい気持ちになる・快感)、harmony(ハーモニー/社会的・音楽的調和)、freedom(自由)、optimism(楽観的)、dignity(尊厳)、forward/propulsive(未来へ向かって前進)、infectious(感染力のある)exuberance(豊潤)、exultation(歓喜)などということばが並びます。
 
 あ〜もう!infectious(感染力のある)なんて、まさに私が感染者(笑)。ソウェトの魅力に感染して、2ヶ月も熱が高いまんま。おまけに保菌者になって、ソウェトファンの感染拡大につとめてますもん。

 ところでソウェト・ゴスペル・クワイヤをはじめ、現代の南アフリカのゴスペルグループの曲を聴いていて、みんなが一様に不思議がるのが、彼らの明るさについてです。南アフリカの黒人は、苦難の人種隔離政策(アパルトヘイト)の歴史を経て、民主化してからまだ13年。ソウェト(ヨハネスブルグ近郊にある、黒人が多く住むタウンシップ)といえば、1976年の反アパルトヘイト「ソウェト蜂起」の武力衝突で死者176人(別の発表では575人)を出した地。現在のソウェトの生活も、まだ決して豊かではありません。

 にもかかわらず、その音楽には米国の黒人霊歌(スピリチュアル)にかつて見られたような、嘆き節は一切ありません。米国のスピリチュアルが、この世を嘆き、自分の居場所は死後の天国にしかないと、ゴスペルに救済を求めたことが多いにもかかわらず、ソウェト・ゴスペル・クワイヤが歌うのは、
 
 ♪この世が天国、この世がパラダイス、今、ここに生きていることが喜び
 
 最初ソウェトを聴いた時の驚きは、まずその圧倒的な美しいハーモニー。そして底抜けの明るさでした。ヘラルド紙のライターも、ソウェトの魅力を、feeling goodということばをキーワードに文章を進めています。ソウェトは、ボブ・マーリーとか、ピーター・ガブリエルの政治的メッセージ性の強い歌もカバーして歌ってるんですが、でも彼らはそれをまた、別の歌に生まれ変わらせてしまうんですね。このヘラルドの記事を読んで気づいたのは、
 
 ソウェトは音楽を〈メッセージの『武器』〉として伝えたんじゃなくて、メッセージを音楽の〈快感・調和〉で伝えた事が、新しいんだなあということ。

 南アフリカのアパルトヘイトの歴史は忘れないけど、それを、怒りや涙や嘆きのメッセージで伝えるんじゃなくて、今の自分の「Joy」や「ハーモニー」で伝える。まずは、明るく楽しく歌ってみる。自分がfeeling good〜エエ気持で歌って、そのfeeling goodが周りに感染する。
 
 歌う側のfeelgoodが、聴く側のfeelgoodを呼び覚まし、その明るさの連鎖こそが、ひいては南アの未来を推進する力になっていく。ヘラルドの記者が言いたかったのもそんな事。
 
 そうよそうよ!これぞゴスペルの神髄じゃ〜ん!とコーフンしてしまいました。
 
 ソウェトの珠玉の曲の数々の中でも、ひときわ美しい曲があります。それが冒頭でご紹介した「南アフリカ共和国国歌」。ソウェトだけではなくて、多くの南アフリカの歌手・クワイヤが、万感の思いを込めて、この歌を歌っています。この歌の冒頭部分「神よ、アフリカに祝福を」の部分は映画『遠い夜明け』でも歌われていますが、当時この歌は正式な国歌ではありませんでした。アパルトヘイト後、1994年にようやく、全人種参加の総選挙が実施され、ネルソン・マンデラ議長が大統領に就任。1997年にそのマンデラ氏が大統領令として制定したのが、この南アフリカの国歌です。
 
 南アフリカには11の公用語があり、そのうちこの国歌にはズールー語・コーサ語・ソト語・アフリカーンス語・英語が使われています。冒頭の現地語で歌われる「神よ、アフリカに祝福を」の部分は、黒人解放運動を象徴する讃美歌であり、アフリカーンス語で歌われているのは、アパルトヘイト時代の国歌「南アフリカの叫び」。これらを組み合わせて、民族が和解し調和する国への願いをこめたとされています。

 苦難の歴史。国歌の分裂。
 そして民主化〜調和・ハーモニーへ。その新しい時代に現れて、ハーモニーをさらに♪Feeling Goodに推し進めつつあるソウェト・ゴスペル・クワイヤ。まさに南アフリカの新しい歴史の中で、生まれたクワイヤであると言わざるを得ません。

 もう一度、味わいながら南アフリカの国歌を聴きませんか?
♪Nkosi Sikele'l Afrika http://www.youtube.com/watch?v=ow40LQs0ue4

 ↑この映像の時代は、民主化のうねりは大きくなっていますが、まだ完全な民主化は達成されていません。歌っている女性は、南アフリカ出身の大歌手ミリアム・マケバ。アメリカで一斉風靡をするも1990年まで31年間祖国を追われ入国を許可されませんでした。国連でアパルトヘイト撤廃を演説するなど、反アパルトヘイトのメッセンジャーとしても、偉大な役割を果たした女性です。
(この映像はおそらく1987年ジンバブエで行われたポール・サイモンなどが主催した「グレースランド・アフリカン・コンサート」)

♪南アフリカ国歌 Nkosi SikeleliAfrika 歌詞

(コーサ語とズールー語)
 Nkosi SikeleliAfrika 神がアフリカを祝福せんことを、
 Maluphakanyiswu phondo lwayo 彼女のホルンを高く揚げんことを、
 Yizwa imithandazo yethu. 私たちの祈りを聴かんことを
 Nkosi sikelela 神があなたの人々である
 Thina lu sapholwayo. 私たちを祝福せんことを

(ソト語)
 Morena boloka Sechaba sa heso 神が私たちの国を救わんことを
 O fedise dintwa le matshwenyeho. 戦争と争いを終えんことを
 O se boloke O se boloke. 南アフリカ
 SeChaba sa heso.
 SeChaba sa.

(アフリカーンス語)
 South Afrika, South Afrika. 南アフリカ、南アフリカ
 Uit die blou van onse hemel, 私たちの青い天から
 Uit die dieptevan ons see, 私たちの深い海から立ち上がる
 Oor ons ewige gebergtes waar die kranse antwoord gee. 
                  反響する岩が鳴り響く永遠の山々の上で

(英語)
 Sounds the call to come toghether, and united we shall stand, 
   和解の呼び声が鳴る、そして私たちは団結して立つだろう
 Let us live and strive for freedom in South Africa, our land. 
   南アフリカ、私たちの土地で自由のために生き努力しよう

                         歌詞と訳出典

ミリアム・マケバについてもまたいつか書きたいですが。makeba 
 『わたしは歌う〜ミリアム・マケバ自伝』福音館日曜日文庫

 
 
 
 

 ソウェト・ゴスペル・クワイヤが歌う南アフリカ共和国国歌を視聴したい方はこちら。18曲目がNkosi Sikele'l Afrika (South African National Anthem)です。
Blessed


 カナダと香港で、ひと足先に、生のソウェト・ゴスペル・クワイヤのコンサートに行かれたお二人の、感動のブログはこちら↓
hanaさんのブログ(カナダ)
 http://blog.drecom.jp/hanapring/archive/284

檸檬さんのブログ(香港)
 http://yaplog.jp/lemon_ch/archive/420

<追記>
 2008年3月 ソウェト・ゴスペル・クワイヤ 日本版オフィシャルファンサイト オープンしました。是非ご覧ください。
 http://www.sowetogospelchoir-fanclub.jp/

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この記事へのコメント

1. Posted by りえ   April 15, 2007 10:46
ウィルスは白血球に負けることなくどんどん増殖してますねえ(笑)。文章見るだけで充分感染度が伝わってきます。
「歌う万華鏡」かあ。。。まさにその通りですね。古館一郎も真っ青な表現力(笑)。ほんと、「綺麗」ですもんね。私らには着こなせないであろう衣装がとっても美しい。そして体の動きがかっこいい。
日本語版HP楽しみにしときますね(^_-)
2. Posted by しんかい   April 15, 2007 12:05
☆りえ様

>ウィルスは白血球に負けることなくどんどん増殖してますねえ(笑)。文章見るだけで充分感染度が伝わってきます。

どうもどうも〜楽しいコメントをいつもありがとうさんです。ソウェトゴスペルのウィルスは、善玉ウィルス(笑)なので、体内増殖→感染させてもぜんぜんOKです。

>日本語版HP楽しみにしときますね(^_-)

はい。なかなか最強メンバーの方々が揃っておられますので、お楽しみに♪
3. Posted by hana   April 16, 2007 04:10
私のライブ感想のリンクまでしていただいて、恐縮です。

でもこのイギリス版ヘラルド紙の記事、たしかに単語の選び方がうまいですね。「歌う万華鏡(singing kaleidoscope)」なんて、本当にその通りだなあと思いますものね。
4. Posted by しんかい   April 16, 2007 10:00
☆hana様

>私のライブ感想のリンクまでしていただいて、恐縮です。

いえいえ、日本ではまだ「ライブの感想」というのが書けないので、実際にソウェトをご覧になった方のお話を聞くとこちらもワクワクしてきます♪リンクの許可をいただきありがとうございました。

>でもこのイギリス版ヘラルド紙の記事、たしかに単語の選び方がうまいですね。「歌う万華鏡(singing kaleidoscope)」なんて、本当にその通りだなあと思いますものね。

本当にそうですね。「歌う万華鏡」というフレーズをみたときは「やられた〜」(笑)、と思いましたもん。
5. Posted by emizo   April 16, 2007 10:32
ちょっと仕事が減ってきたので(;^_^A  私もマスクをはずして菌に触れてみようかな(笑)

ソウェトSNSの皆さんの熱さなら、日本語版HPができるのは予想しておりました。いつか日本でのライブも実現するといいですよね!


6. Posted by しんかい   April 16, 2007 17:48
☆emizo様

いやあ〜文学的なコメントをありがとうございます。

>ちょっと仕事が減ってきたので(;^_^A  私もマスクをはずして菌に触れてみようかな(笑)

花粉症の季節も終わったし?、はい!マスクは無しで、ソウェト菌にたっぷり接触してくださいませ。次回お会いする際に、菌を持参いたします♪

7. Posted by ルミコ   April 17, 2007 00:00
グレース・しんかいさん

いつもグレースさんの勉強意欲やリサーチ力にはほんと、感心します。

「南アフリカのアパルトヘイトの歴史は忘れないけど、それを、怒りや涙や嘆きのメッセージで伝えるんじゃなくて、今の自分の「Joy」や「ハーモニー」で伝える。まずは、明るく楽しく歌ってみる。自分がfeeling good〜エエ気持で歌って、そのfeeling goodが周りに感染する。」

そうなんですよ。なんと、南アフリカに限らず、アフリカ人のゴスペルは、どんなに苦しくても、貧しくても、悲しくてもゴスペルを歌うときの彼らはほんとに驚くほど明るく楽しそうに体全体と声で喜びをいっぱい表現するんです。

これは、私がはじめて西アフリカ・ガーナに足を踏み入れた時から今までずっと持ち続けている不思議のひとつで、アフリカ人でしか持ち合わせていない“明日は今日よりももっと良い日になるだろう”という楽天さともいえる明るさなんですよね。

8. Posted by しんかい   April 17, 2007 09:48
☆ルミコ様

いつもお世話になっております。

>そうなんですよ。なんと、南アフリカに限らず、アフリカ人のゴスペルは、どんなに苦しくても、貧しくても、悲しくてもゴスペルを歌うときの彼らはほんとに驚くほど明るく楽しそうに体全体と声で喜びをいっぱい表現するんです。

私は、ソウェトに出会って、ようやくアフリカンゴスペルの入り口にたったばかりで、他のアフリカ諸国のゴスペルはまだ知らないのですが、あの明るさは、他の地域でもそうなんですか!!もっともっとアフリカのゴスペルを聴いてみたい気持ちが膨らみました。そしてそれらが日本にも、もっと紹介されてしかるべきですよね。

私は、アフリカといえば、やっぱりステレオタイプの知識しか持ち合わせていないので、実際のアフリカに造詣の深いルミコさんのお話は、とても勉強になります。今後ともよろしくお願いいたします。
9. Posted by aya   August 16, 2007 18:57
5
はじめまして。
先日、ボルネオ島で行われたワールドミュージックフェスティバルで始めてコシシケレアフリカを聴きました♪♪
アフリカのゴスペル、最高ですね。
とっても素敵なブログなので、
私のブログで引用させて頂きました。
http://huelife.seesaa.net/article/51611287.html
ありがとうございました♪
10. Posted by しんかい   August 21, 2007 10:36
☆aya様

はじめまして。帰省していて、お返事が遅れまして、申し訳ございません。ayaさんのベトナム発信からのブログに、リンクしていただき、ありがとうございました。

ワールドミュージックフェスティバル!素敵ですね。歌われている言語がわからなくても、歌は素直に感動できますもんね。

それにしても、ベトナムからコメントをいただき、内容は、ボルネオ島でのミュージックフェスティバルで、歌は南アフリカの話で・・・!、世界は繋がっているんだなあと、感慨深いものがありました。また、よろしかったら、当ブログにも遊びに来てください。
11. Posted by RobertKl   April 16, 2014 22:52
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