July 28, 2009
見てきました!!「完璧な皆既日食」@小笠原〜北硫黄島近海「ふじ丸」船上にて
Gospel Soup (89) 「完璧な皆既日食」
それはそれは、今までの人生で一番きれいで、一番不思議な光景でした。
奄美方面のお天気がすぐれない中、本当に申し訳ない感じなのですが、幸運にも晴天だった小笠原の南、北硫黄島近海で、船上から完璧な皆既日食を見て、帰宅しました。
小学校5年生の時、部分日食を見て感激して以来、「いつかは、皆既日食を見たい」と、ずーっと思っていたのですが、実際に洋上で見たホンモノの「皆既」日食は、今まで見た写真や映像や、想像とすら全く違う、言葉にならないくらい美しく崇高なものでした。
<NHKによる北硫黄島での皆既日食> (*私たちは硫黄島には上陸してません。)
それはそれは、今までの人生で一番きれいで、一番不思議な光景でした。
奄美方面のお天気がすぐれない中、本当に申し訳ない感じなのですが、幸運にも晴天だった小笠原の南、北硫黄島近海で、船上から完璧な皆既日食を見て、帰宅しました。
小学校5年生の時、部分日食を見て感激して以来、「いつかは、皆既日食を見たい」と、ずーっと思っていたのですが、実際に洋上で見たホンモノの「皆既」日食は、今まで見た写真や映像や、想像とすら全く違う、言葉にならないくらい美しく崇高なものでした。
<NHKによる北硫黄島での皆既日食> (*私たちは硫黄島には上陸してません。)
<参加の背景>
夫が天体観測はせずに、宇宙の計算ばっかりしているという物理屋という仕事柄、兵庫県立大学の公開講座としてチャーターされた客船「ふじ丸」のボランティア・スタッフとして混ぜていただき、私と子ども2人も、1年半前から乗船予約しました。この参加は一般に公募もされていたのですが、500人余りの定員が予約初日で、満席になったそうです。
姫路から7月20日(月)に出航。http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/natnews/topics/280407/
これは乗船してから知ったのですが、今回の一大企画は、黒田武彦教授を中心に、実に6年も前から!実に綿密・周到に、また強烈な熱意と実行力のもとに計画され、実現したものだとういうことでした。「今世紀最大級の皆既日食」と謳われた今回の日食とはいえ、皆既の時間は、最大に見られる地帯でもたった6分半余り。多くの日食ツアーが奄美近辺に集結した中で、この船は最初から、雨の少ない最高の条件を考えて、太平洋高気圧
の発達しやすい小笠原近海を目指して企画されていたものでした。
ですから今回、皆既日食を完璧な状況で見ることができたのは、まさに幸運と、この企画をしてくださった方々の、作戦勝ちとでも言うべきなのかもしれません。さらに、ふじ丸の船長さんも、天気図から雲のない場所へと目的地を決定し、日食直前まで、刻一刻と場所を変える雲に、太陽が隠されない地点へと、進行方向を微調整しながら、艘舵してくださったその判断と腕の力も大きかったと聞きました。では、以下、ゴスペルとは関係ない日食レポートです。
<当日・皆既まで>
7月22日(水)。昨日までの曇天が嘘のような晴天。海も波はなく、まるで紺碧の鏡のようでした。空にはちぎれ雲が浮かぶ程度の、まさに日食日和。500人の参加者はそれぞれ、船の甲板を含む6階〜8階の、事前に打ち合わせした場所に9時に集結。甲板は暑いので、各自マットを敷いて、10時から始まる「食の開始」に備えて準備をしました。
いやはや、研究者の方や、天文ファン、世界各地で数々の日食を見て来られた「日食ハンター」の方々の装備のすごさには、本当にびっくり。大きな三脚に望遠鏡。様々なレンズやフィルターを搭載したカメラ。双眼鏡。ビデオ類。いったい撮影機具だけで、皆さま荷物は何キロ!?
我が家はといえば、夫は、スタッフではあるものの皆既日食観測は初めて。望遠鏡は自宅に置いたままで、今回は双眼鏡と家庭用ビデオ・カメラにフィルターとつけただけの、実に「丸腰」状態。事前に聞いた話だと、「とにかく、皆既日食は、単に太陽が全部隠れるというだけでなく、すべてが部分日食とは全然まるっきり別モノなんだ。」ということ。私はもう機械を通さず「肉眼で」ちゃんと6分間、その瞬間を体験するのだと、カメラさえ持たずに、日食グラスだけ持参しました。
<いよいよ「皆既」日食が始まる>
あんなに待ち望んでいた太陽も、甲板の上でじりじりと容赦なく照りつけられると、さすがに暑い。10時きっかりに日食が始まり、日食グラスで欠けていく太陽を、時折見ながら、適宜甲板を離れ、日陰で休んで水分を摂る繰り返し。
太陽はどんどん欠けていく。4割・5割・・・日食グラスで見ると、「もうこんなに欠けている!」と思うけれど、太陽の光はまだ、何も変わらないかのように、ギラギラと照っている。
太陽がもっと細くなり、あたりの気温が低くなったことに気づいたのが、ようやく皆既15分前くらい。皆既は11時26分頃から。その瞬間を皆、今か今かと皆が待っている。
まさに劇的に状況が変わり始めたのは、皆既の3分くらい前から。
体感温度はさらに低くなり、空も薄暗くなりはじめる。そして、最初に太陽の右の暗がりから見えたのが、金星。そしてそこからの変化は、すごかった。金星が見えてから、ますます暗さが深まり、次に太陽の左に見えたのが水星!水星なんて見たのは初めて。しかも、太陽のすぐ近くに、星が見えるなんて!!???
そのあと、皆既直前の2分前くらいからは、さらに翳りを感じ始めた。でもこの段階ではまだ夜の闇とは、何というか闇の色と空気の色が違うのだ。さらにびっくりしたのは、空は闇なのに遥か先太平洋の水平線上の向うは明るくて・・・・円弧を描く水平線が、オレンジ色の夕焼けに染まり、輝き始めたことだ!!
普通の夕焼けは、西の空だけが赤くなるのだが、海全体の視界360度、すべての方向が茜色の夕焼け雲と空の大パノラマ。
これは何という光景なのだろう。
辺りは闇。頂天の太陽は、限りなく細く細くなって、もう日食グラス無しでも見られる。細い太陽が最後の輝きを放ち、海は灰色に陰りさざ波が光るだけ。そしてその水平線の上だけが、ぐるり燃えるようなオレンジと灰色の雲で輝いている状態。人生で全く見たことのない、あるはずのない美しい風景に頭は混乱し、まるで巨大なドームのSF映画セットの中に、自分が紛れこんだかのような錯覚を覚える。
特に水平線全面が赤く染まる現象が起こるとは、私も全く知らず、あちこちからも感嘆の声があがる。
そして皆既間際、最後の1分間に、本当の闇がやって来た。
皆既日食の闇は、本当に「やって来る」のだ。ここは太平洋の海の上。全天型劇場の電気が、数秒間でフェードアウトするような、包み込まれるような闇。びっくりするような寒い風が洋上を渡り肌をなでる。
皆既が始まる緊張感で、みんなも口数が少なくなり、息をのんでいるので、急にひっそりし始める。周りにこんなにたくさん人がいるのに、宇宙の中に自分だけがいるような、自分がどこにいるのかわからないような孤独感。にわかに闇に包まれた状態に、参加者の小さな女の子が、一人「こわい〜」と泣きはじめた。
そう。これは本能的に怖いのだ。
皆既日食直後のコロナをきれいに見るために、目を闇に慣らすために、しばらく閉じて、マットの上に寝転がる。
「もうすぐです!もうすぐ皆既になります。」というアナウンスがあり、次の瞬間、太陽の向かって左側がひと際、まぶしいほどに真っ白に、大きく閃光となりピカーッと光り、
ダイヤモンドリングが見えた!!!!
ダイヤモンドリングが見えているのは、わずか1・2秒。その一瞬のあと、ついに太陽は、丸く真っ黒になり、コロナが太陽の円の周りから真珠色の光を放ち始めた。皆既日食の始まりだ。みんなもう、思わず、歓声と大拍手。私も拍手をしながら、あまりの美しさに涙が流れた。夫も子どもたちもみんな、「見れたね〜〜〜!!!」
6分半の皆既の間。闇の中で真上の太陽(実際には月の影だが)だけが、より黒々と漆黒になり、コロナが白く不思議な光を放っている。コロナは本当に、太陽から発せられ、輝きゆらめいているのがよくわかる。まるでシューシューという音でも聴こえてきそうな感じ。
あちこちで、皆既日食が見られたことに喜び、抱き合う人、ぼーっとする人、興奮のあまりにしゃべり続けている人、カメラのシャッターを切るのに忙しい人。レンズの付け替えに忙しい人。夫はビデオのフィルターをどうのこうのしつつ、忙しい。子どもも写真を撮りたがっていたけど、たった数分の皆既日食なんだから、「カメラはいいから、自分の目で見なさい。」と言いつつ、私はずっと空の光る黒い太陽とコロナと、水平線ぐるり一面のオレンジ色を交互に見ていた。
「いよいよ、皆既時間も終わりますよ〜」というアナウンスに、またマットに横になり、ダイヤモンドリングを待つ(第3接触)。今度は、太陽が向かって右側から出て来る。そして右側から一瞬、青い光がキラリと横に伸び、またまたまぶしい光が拡大し、またまた本当にダイヤモンドの指輪の形になった。いやダイヤモンドリングというより、発光する真珠のリングのような色と形。
ああ!これで両方のダイヤモンドリングが見えたんだな〜と、感無量になっていると、その感動の余韻にひたる暇もなく、太陽が顔を出しはじめた。そしていったん太陽が出て来ると、わずか1分もしないうちに、あたり一面は明るさを取り戻し、まるで何事も無かったように、能天気な程にピーカンな昼間の夏の太陽が、甲板を焼きはじめた。
え!?え?
こんなに、すぐに明るくもどっちゃうの?あれは何だったの?何だかキツネにつままれて、夢から醒めたような気分。あらためて「完璧な」皆既日食が見られたことに、みんな大拍手だった。
<2日後>
俗に、人は
「皆既日食を見たら、人生が変わる」
と言われているらしい。そしてまた次の日食を見たくなり海外にも出かけてしまう「日食病」にかかる人(笑)も多いらしい。皆既日食は「天体ショー」とよく言われるけど、「ショー」と言うにはおこがましい。私たちは地球に生きていて、太陽に照らされ、月が日々回っていることをあらためて感じ、何がしかの畏敬と不思議の念を抱くのは確かだ。
今回のツアーが素晴らしかったことのもう一つは、大学の公開講座の一環であったため、3つの「講座」があった他、多くの研究者やマスコミの方も同乗していたことで、サイエンス・トークという名のミニ講演が、毎日あったことだ。その中でも、日食2日後にあった大阪教育大の福江純先生の、「ちょうどいい宇宙」というタイトルのトークが興味深かった。
何気なく生活している私たちだが、実はこの地球も、重力も、月と太陽との関係も、距離も大きさも実に絶妙なバランスの上に、「ちょうどよく」と言いたくなるような状況で存在しているというお話。
もし地球の重力がもっと強かったら、私たちは、地球にへばりつき、人と人とでさえ、重力で互いがくっついてしまうだろう。地球には、たまたま月という衛星があり、太陽と月は距離も大きさも全く違うのに、地球からの見かけの大きさでは、ほぼ同じ。今回、私たちは幸運にも皆既日食が見れたが、でも月は、引力の関係で徐々に地球から離れていってしまっているので、数万年前の地球には「皆既」日食はは無く、あと数万年経てば、「皆既」日食は、地球では起こらないんだそうだ。え!?そうなの?そうか、知らなかったな〜。
ネアンデルタールの時代には、「皆既」日食は無かったのか。そして数万年後の人類はもう、この美しい皆既日食も、ダイヤモンドリングも実際に見ることはないのか。
今回、日本は全体的にお天気が悪く、その中の皆既日食を見られたことは、本当にラッキーで感謝の気持ちで一杯なのだが、さらに46憶年という地球の歴史の中でも、皆既日食が見られる限られた絶妙に幸運な期間の中に、今の人類は生きているらしいのだった。
What a grace!!
(というわけで、皆既中の写真はないのですが、トップの写真は、太陽が6割ほど欠けた時に、ピンでGOSPEL SOUPと小さな穴をあけた画用紙をかざして、影とピンホールの光を撮影。ピンの円一つ一つの太陽が欠けているのが見えますか?)

夫が天体観測はせずに、宇宙の計算ばっかりしているという物理屋という仕事柄、兵庫県立大学の公開講座としてチャーターされた客船「ふじ丸」のボランティア・スタッフとして混ぜていただき、私と子ども2人も、1年半前から乗船予約しました。この参加は一般に公募もされていたのですが、500人余りの定員が予約初日で、満席になったそうです。
姫路から7月20日(月)に出航。http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/natnews/topics/280407/
これは乗船してから知ったのですが、今回の一大企画は、黒田武彦教授を中心に、実に6年も前から!実に綿密・周到に、また強烈な熱意と実行力のもとに計画され、実現したものだとういうことでした。「今世紀最大級の皆既日食」と謳われた今回の日食とはいえ、皆既の時間は、最大に見られる地帯でもたった6分半余り。多くの日食ツアーが奄美近辺に集結した中で、この船は最初から、雨の少ない最高の条件を考えて、太平洋高気圧

ですから今回、皆既日食を完璧な状況で見ることができたのは、まさに幸運と、この企画をしてくださった方々の、作戦勝ちとでも言うべきなのかもしれません。さらに、ふじ丸の船長さんも、天気図から雲のない場所へと目的地を決定し、日食直前まで、刻一刻と場所を変える雲に、太陽が隠されない地点へと、進行方向を微調整しながら、艘舵してくださったその判断と腕の力も大きかったと聞きました。では、以下、ゴスペルとは関係ない日食レポートです。
<当日・皆既まで>
7月22日(水)。昨日までの曇天が嘘のような晴天。海も波はなく、まるで紺碧の鏡のようでした。空にはちぎれ雲が浮かぶ程度の、まさに日食日和。500人の参加者はそれぞれ、船の甲板を含む6階〜8階の、事前に打ち合わせした場所に9時に集結。甲板は暑いので、各自マットを敷いて、10時から始まる「食の開始」に備えて準備をしました。
いやはや、研究者の方や、天文ファン、世界各地で数々の日食を見て来られた「日食ハンター」の方々の装備のすごさには、本当にびっくり。大きな三脚に望遠鏡。様々なレンズやフィルターを搭載したカメラ。双眼鏡。ビデオ類。いったい撮影機具だけで、皆さま荷物は何キロ!?
我が家はといえば、夫は、スタッフではあるものの皆既日食観測は初めて。望遠鏡は自宅に置いたままで、今回は双眼鏡と家庭用ビデオ・カメラにフィルターとつけただけの、実に「丸腰」状態。事前に聞いた話だと、「とにかく、皆既日食は、単に太陽が全部隠れるというだけでなく、すべてが部分日食とは全然まるっきり別モノなんだ。」ということ。私はもう機械を通さず「肉眼で」ちゃんと6分間、その瞬間を体験するのだと、カメラさえ持たずに、日食グラスだけ持参しました。
<いよいよ「皆既」日食が始まる>
あんなに待ち望んでいた太陽も、甲板の上でじりじりと容赦なく照りつけられると、さすがに暑い。10時きっかりに日食が始まり、日食グラスで欠けていく太陽を、時折見ながら、適宜甲板を離れ、日陰で休んで水分を摂る繰り返し。
太陽はどんどん欠けていく。4割・5割・・・日食グラスで見ると、「もうこんなに欠けている!」と思うけれど、太陽の光はまだ、何も変わらないかのように、ギラギラと照っている。
太陽がもっと細くなり、あたりの気温が低くなったことに気づいたのが、ようやく皆既15分前くらい。皆既は11時26分頃から。その瞬間を皆、今か今かと皆が待っている。
まさに劇的に状況が変わり始めたのは、皆既の3分くらい前から。
体感温度はさらに低くなり、空も薄暗くなりはじめる。そして、最初に太陽の右の暗がりから見えたのが、金星。そしてそこからの変化は、すごかった。金星が見えてから、ますます暗さが深まり、次に太陽の左に見えたのが水星!水星なんて見たのは初めて。しかも、太陽のすぐ近くに、星が見えるなんて!!???
そのあと、皆既直前の2分前くらいからは、さらに翳りを感じ始めた。でもこの段階ではまだ夜の闇とは、何というか闇の色と空気の色が違うのだ。さらにびっくりしたのは、空は闇なのに遥か先太平洋の水平線上の向うは明るくて・・・・円弧を描く水平線が、オレンジ色の夕焼けに染まり、輝き始めたことだ!!
普通の夕焼けは、西の空だけが赤くなるのだが、海全体の視界360度、すべての方向が茜色の夕焼け雲と空の大パノラマ。
これは何という光景なのだろう。
辺りは闇。頂天の太陽は、限りなく細く細くなって、もう日食グラス無しでも見られる。細い太陽が最後の輝きを放ち、海は灰色に陰りさざ波が光るだけ。そしてその水平線の上だけが、ぐるり燃えるようなオレンジと灰色の雲で輝いている状態。人生で全く見たことのない、あるはずのない美しい風景に頭は混乱し、まるで巨大なドームのSF映画セットの中に、自分が紛れこんだかのような錯覚を覚える。
特に水平線全面が赤く染まる現象が起こるとは、私も全く知らず、あちこちからも感嘆の声があがる。
そして皆既間際、最後の1分間に、本当の闇がやって来た。
皆既日食の闇は、本当に「やって来る」のだ。ここは太平洋の海の上。全天型劇場の電気が、数秒間でフェードアウトするような、包み込まれるような闇。びっくりするような寒い風が洋上を渡り肌をなでる。
皆既が始まる緊張感で、みんなも口数が少なくなり、息をのんでいるので、急にひっそりし始める。周りにこんなにたくさん人がいるのに、宇宙の中に自分だけがいるような、自分がどこにいるのかわからないような孤独感。にわかに闇に包まれた状態に、参加者の小さな女の子が、一人「こわい〜」と泣きはじめた。
そう。これは本能的に怖いのだ。
皆既日食直後のコロナをきれいに見るために、目を闇に慣らすために、しばらく閉じて、マットの上に寝転がる。
「もうすぐです!もうすぐ皆既になります。」というアナウンスがあり、次の瞬間、太陽の向かって左側がひと際、まぶしいほどに真っ白に、大きく閃光となりピカーッと光り、
ダイヤモンドリングが見えた!!!!
ダイヤモンドリングが見えているのは、わずか1・2秒。その一瞬のあと、ついに太陽は、丸く真っ黒になり、コロナが太陽の円の周りから真珠色の光を放ち始めた。皆既日食の始まりだ。みんなもう、思わず、歓声と大拍手。私も拍手をしながら、あまりの美しさに涙が流れた。夫も子どもたちもみんな、「見れたね〜〜〜!!!」
6分半の皆既の間。闇の中で真上の太陽(実際には月の影だが)だけが、より黒々と漆黒になり、コロナが白く不思議な光を放っている。コロナは本当に、太陽から発せられ、輝きゆらめいているのがよくわかる。まるでシューシューという音でも聴こえてきそうな感じ。
あちこちで、皆既日食が見られたことに喜び、抱き合う人、ぼーっとする人、興奮のあまりにしゃべり続けている人、カメラのシャッターを切るのに忙しい人。レンズの付け替えに忙しい人。夫はビデオのフィルターをどうのこうのしつつ、忙しい。子どもも写真を撮りたがっていたけど、たった数分の皆既日食なんだから、「カメラはいいから、自分の目で見なさい。」と言いつつ、私はずっと空の光る黒い太陽とコロナと、水平線ぐるり一面のオレンジ色を交互に見ていた。
「いよいよ、皆既時間も終わりますよ〜」というアナウンスに、またマットに横になり、ダイヤモンドリングを待つ(第3接触)。今度は、太陽が向かって右側から出て来る。そして右側から一瞬、青い光がキラリと横に伸び、またまたまぶしい光が拡大し、またまた本当にダイヤモンドの指輪の形になった。いやダイヤモンドリングというより、発光する真珠のリングのような色と形。
ああ!これで両方のダイヤモンドリングが見えたんだな〜と、感無量になっていると、その感動の余韻にひたる暇もなく、太陽が顔を出しはじめた。そしていったん太陽が出て来ると、わずか1分もしないうちに、あたり一面は明るさを取り戻し、まるで何事も無かったように、能天気な程にピーカンな昼間の夏の太陽が、甲板を焼きはじめた。
え!?え?
こんなに、すぐに明るくもどっちゃうの?あれは何だったの?何だかキツネにつままれて、夢から醒めたような気分。あらためて「完璧な」皆既日食が見られたことに、みんな大拍手だった。
<2日後>
俗に、人は
「皆既日食を見たら、人生が変わる」
と言われているらしい。そしてまた次の日食を見たくなり海外にも出かけてしまう「日食病」にかかる人(笑)も多いらしい。皆既日食は「天体ショー」とよく言われるけど、「ショー」と言うにはおこがましい。私たちは地球に生きていて、太陽に照らされ、月が日々回っていることをあらためて感じ、何がしかの畏敬と不思議の念を抱くのは確かだ。
今回のツアーが素晴らしかったことのもう一つは、大学の公開講座の一環であったため、3つの「講座」があった他、多くの研究者やマスコミの方も同乗していたことで、サイエンス・トークという名のミニ講演が、毎日あったことだ。その中でも、日食2日後にあった大阪教育大の福江純先生の、「ちょうどいい宇宙」というタイトルのトークが興味深かった。
何気なく生活している私たちだが、実はこの地球も、重力も、月と太陽との関係も、距離も大きさも実に絶妙なバランスの上に、「ちょうどよく」と言いたくなるような状況で存在しているというお話。
もし地球の重力がもっと強かったら、私たちは、地球にへばりつき、人と人とでさえ、重力で互いがくっついてしまうだろう。地球には、たまたま月という衛星があり、太陽と月は距離も大きさも全く違うのに、地球からの見かけの大きさでは、ほぼ同じ。今回、私たちは幸運にも皆既日食が見れたが、でも月は、引力の関係で徐々に地球から離れていってしまっているので、数万年前の地球には「皆既」日食はは無く、あと数万年経てば、「皆既」日食は、地球では起こらないんだそうだ。え!?そうなの?そうか、知らなかったな〜。
ネアンデルタールの時代には、「皆既」日食は無かったのか。そして数万年後の人類はもう、この美しい皆既日食も、ダイヤモンドリングも実際に見ることはないのか。
今回、日本は全体的にお天気が悪く、その中の皆既日食を見られたことは、本当にラッキーで感謝の気持ちで一杯なのだが、さらに46憶年という地球の歴史の中でも、皆既日食が見られる限られた絶妙に幸運な期間の中に、今の人類は生きているらしいのだった。
What a grace!!
(というわけで、皆既中の写真はないのですが、トップの写真は、太陽が6割ほど欠けた時に、ピンでGOSPEL SOUPと小さな穴をあけた画用紙をかざして、影とピンホールの光を撮影。ピンの円一つ一つの太陽が欠けているのが見えますか?)

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この記事へのコメント
1. Posted by べちゃん July 28, 2009 08:46
大枚はたいて悪石島などに行った方の、悲惨なニュースはみましたが、小笠原諸島にでかけたツアーの方々は、最高の日食ツアーだったんですね。
本当に、貴重な人生かわりそうな勢いの<その瞬間>なんですね。いいなぁ。私もそこにいたかった。
I wish I could be there.
人生っていうのは思いがけない事がその進路をかえるっていうし、きっとしんかい家のみなさん、特に子ども達は、このツアーが>それ>になったかもしれませんね。
このたびの日食は、宇宙の現象だけでなく、<それぞれの人生>というものを思いめぐらすようなイベントであったな〜と思います。
それにしても、悪石島の人々は気の毒です。
本当に、貴重な人生かわりそうな勢いの<その瞬間>なんですね。いいなぁ。私もそこにいたかった。
I wish I could be there.
人生っていうのは思いがけない事がその進路をかえるっていうし、きっとしんかい家のみなさん、特に子ども達は、このツアーが>それ>になったかもしれませんね。
このたびの日食は、宇宙の現象だけでなく、<それぞれの人生>というものを思いめぐらすようなイベントであったな〜と思います。
それにしても、悪石島の人々は気の毒です。
2. Posted by emizo July 28, 2009 09:45
いや〜、水星や金星の話は、どこの報道機関もやっていなかったでしょう。すごいですね。読みいってしまいました。
世界中を追っかける皆既日食ファンがいるというのも納得です。
悪石島の中継のあとに飛び込んできた硫黄島の映像、そっちだったかーー! 参加されたチームの研究の賜物ですね。ホントしんかいファミリーの運の良さというか、大人はもちろん子どもたちも忘れられない思い出になったでしょうね。夏休みの宿題は、これにキマリ?
世界中を追っかける皆既日食ファンがいるというのも納得です。
悪石島の中継のあとに飛び込んできた硫黄島の映像、そっちだったかーー! 参加されたチームの研究の賜物ですね。ホントしんかいファミリーの運の良さというか、大人はもちろん子どもたちも忘れられない思い出になったでしょうね。夏休みの宿題は、これにキマリ?
3. Posted by ロン@ゴスペル July 28, 2009 12:31
実況報告、有り難うございました。
実際に体験なさった方はやはり違いますね。
しんかいさんの筆力の助けもあって、臨場感満点です。
有り難う御座いました。
実際に体験なさった方はやはり違いますね。
しんかいさんの筆力の助けもあって、臨場感満点です。
有り難う御座いました。
4. Posted by shinkai July 28, 2009 18:04
☆べちゃん様
はい。悪石島方面に行かれた方々は、島在住の方も長期間に渡ってご準備されていたとのことで、なおさらお気の毒でした・・・・。
子どもたちも、何らかの思いで、今回の日食を見て、人生の糧(のようなもの)にしてくれたらいいなあと思います。
私でさえ、小学校5年生の時に、初めて部分日食をみた時、クラスの頭のいい友人が、「かいきにっしょく」「きんかんしょく」のことを教えてくれたのですが、それを「怪奇日食(こわい日食)」「金柑食(黄色い日食)」と中2になるまで勘違い(笑)それでも「いつかは見たいなあ」と思っていましたもん。
はい。悪石島方面に行かれた方々は、島在住の方も長期間に渡ってご準備されていたとのことで、なおさらお気の毒でした・・・・。
子どもたちも、何らかの思いで、今回の日食を見て、人生の糧(のようなもの)にしてくれたらいいなあと思います。
私でさえ、小学校5年生の時に、初めて部分日食をみた時、クラスの頭のいい友人が、「かいきにっしょく」「きんかんしょく」のことを教えてくれたのですが、それを「怪奇日食(こわい日食)」「金柑食(黄色い日食)」と中2になるまで勘違い(笑)それでも「いつかは見たいなあ」と思っていましたもん。
5. Posted by shinkai July 28, 2009 18:07
☆emizo様
NHKでも、金星と水星については、少し触れてました。
ただ、太陽をそのものを写す固定望遠カメラだったので、空全体を写すのは難しかったようですね。
夏休みの宿題。はい、もちろんコレです。
でも、夏休みのメインイベントが終わり、すでに夏休みが終了したような気分で、家族みんな腑抜けになってしまっています。今。
NHKでも、金星と水星については、少し触れてました。
ただ、太陽をそのものを写す固定望遠カメラだったので、空全体を写すのは難しかったようですね。
夏休みの宿題。はい、もちろんコレです。
でも、夏休みのメインイベントが終わり、すでに夏休みが終了したような気分で、家族みんな腑抜けになってしまっています。今。
6. Posted by shinkai July 28, 2009 18:13
☆ロン@ゴスペル様
ロンさんが撮影なさった東京での日食の写真も拝見しましたよ〜♪♪
東京でも、雲間から絶妙のちょうど良い具合に見られて良かったですね。
来年はイースター島で、皆既日食だそうで、日本からもまた別な主催者さんによるツアーが組まれるそうですよ。我が家は家族全員で、イースター島に行くと、破産するので、行けませんが(泣)、ロンさん、ご夫妻でいかがですか?
ロンさんが撮影なさった東京での日食の写真も拝見しましたよ〜♪♪
東京でも、雲間から絶妙のちょうど良い具合に見られて良かったですね。
来年はイースター島で、皆既日食だそうで、日本からもまた別な主催者さんによるツアーが組まれるそうですよ。我が家は家族全員で、イースター島に行くと、破産するので、行けませんが(泣)、ロンさん、ご夫妻でいかがですか?
7. Posted by tomocci July 29, 2009 11:09
これはなんとも素敵な体験ですね〜!
NHKで船から中継やってるのを観ていましたが
皆さんうっとりした表情で羨ましかったです。。。
しんかいさんの文章もまた美しくまとまっており
臨場感が伝わって来ました。
福岡では90%欠けたんで、薄暗くなって
職場の皆さんとワイワイ外で過ごしていました。
これもまた貴重な経験でした。。。
NHKで船から中継やってるのを観ていましたが
皆さんうっとりした表情で羨ましかったです。。。
しんかいさんの文章もまた美しくまとまっており
臨場感が伝わって来ました。
福岡では90%欠けたんで、薄暗くなって
職場の皆さんとワイワイ外で過ごしていました。
これもまた貴重な経験でした。。。
8. Posted by shikai July 29, 2009 23:11
☆tomocci様
お久しぶりです。福岡は90%でしたか。90%というのも、めったにない大きな「食」ですよね。職場の皆さんと、ワイワイ外で日食というのも楽しそう!
話は変わりますが、そういえば、私、九州って、なぜかまだ一度も行ったことがないのです。一度旅行してみたいです。
お久しぶりです。福岡は90%でしたか。90%というのも、めったにない大きな「食」ですよね。職場の皆さんと、ワイワイ外で日食というのも楽しそう!
話は変わりますが、そういえば、私、九州って、なぜかまだ一度も行ったことがないのです。一度旅行してみたいです。